2024年8月8日(木)午後6時半開演。全水道会館4F大会議室。ドキュメンタリー映画『死んどるヒマはない−益永スミコ86歳』上映会+アフタートーク。予約はこちらから。
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めったにない映画ですぞ! 敢えて自分の尻をむきだした男がここにいて、知友が智力腕力を集中させて一篇のドキュメンタリーを創りあげた。これこそがこんにちの芸術だ!(小沢信男/作家)
制作 ビデオプレス/2016年8月/60分 レイバー映画祭2016で初上映・2017年全国自主上映へ
●映画解説
2012年12月、映画批評家の木下昌明さんにがんが見つかった。そのときかれは「頭が真っ白になった」という。医師は即手術を求めたが、これを拒否し、しばらく様子をみることにした。その日から、常識とされているがん医療との闘いが始まった。何人もの医師との面談をビデオで撮り、本を読み、
治療法を模索した。それはかれの映画批評の精神と通底していた。まだ動けるうちは動く。仕事に出かけ、映画の試写会や国会前のデモにも参加しつづけた。そ れをカメラは追った。はたして・・・
出演=木下昌明・志真泰夫(緩和ケア医師)・近藤誠(がん専門医)ほか
取材=松原明・佐々木有美
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先日、私は50歳になった。自分が歳を取ったからなのか、公言する人が増えたからなのかわからないが、周囲にがんの人が多い。自分の父親も数年前から二 つのがんを患っている。父親のがんが判明した時は、かなり焦って右往左往した。その時に、もし、この『がんを育てた男』を観ていたならば、あんなに動揺し なくても済んだかもしれない。
上映会は、去る12月9日(金)に開催された。年末の金曜日、忘年会やら何やらいろいろあって参加者の人数が心配されたが、開場するやいなやどんどん人がやってきて、最終的には50名近くになった。やはり、がんは他人事ではないということか?
物語の主人公は、映画評論家の木下昌明さん。現在、78歳。私の父親より一つ年下だ。木下さんは、四年前の2012年にがんを宣告される。勿論、動揺する。この作品は、初めから現代医療に抵抗して「がんを育てるぞ」と決め込んだ格好良い男の話ではない。そこが、面白い。
木下さんは、セカンドオピニオン、サードオピニオン…と、自分が納得するまでがんと向き合う方法を探し続ける。医師との面談を自らビデオに撮り、関連書籍 を読み漁る。そこには、これまで映画評論とともに社会運動にコミットし続けた彼の批評精神に通底する反骨心が見え隠れする。
とは言え、 先述したように、これは格好良い男の話ではない。「すっかり、おじいちゃんになっちゃったよ…」と病床でこぼすチャーミングな“おじいちゃん”の物語だ。 その魅力を引き出したのは、彼の友人である制作者の松原明さんと佐々木有美さんだ。二人は私より先輩なので、友人ががんになったからといって、私のように
右往左往したりしない。「まぁ、しょうがないよ」と軽口をたたきながら、木下さんの“闘い”をやさしくサポートする。そして、映画は、病気を見て人を見な い現代の外科手術第一主義の医療の問題を浮き彫りにして行く。木下さんは最終的に…
…と、ここから先は、本編を是非ご覧頂きたいと思う。本作『がんを育てた男』は、来年劇場公開予定とのこと。あっとその前に、現在の木下さんのがんとの向き合い方をご自身で3分の映像にまとめた作品が今週土曜17日に開催される「レイバーフェスタ2016」で上映されるということが、今回の上映会のディスカッションの時に発表されました!「がんを育てた男」の現在を、皆さん是非ご覧下さい!(土屋 豊)
*ビデオアクトブログより転載紹介。
10月2日の「特別完成試写会」は、シアターXのホールで行われました。ゴージャスな会場でした。65名が参加し、上映後も「木下さんの生き方がすごい」など熱い反響がありました。いっぽう、「追加編集でわかりやすくなったが、ゴツゴツしたところもほしい」の注文も。12月9日にビデオアクト上映会もあるので、いろんなご意見を伺っていきたいと思います。二次会は下町らしい「どて焼き」の店に行きました。この日偶然、芝居にみてきて知ったという「鍼灸師」も二次会までやってきました。(M)
本音のコラム 鎌田慧「がんを育てた男」
がんで死んだ友人。がんになったけど生きている友人。日本人の二人に一人が患い、三人に一人が死ぬ、という。がんは見慣れた風景となった。
知人の映画評論家・木下昌明さん(78)は四年前、肛門にがんが発見され、手術しなければ余命半年から二年と宣告された。前立腺もばうこうもそっくり削り取る、骨盤内臓の全損手術が医師の提案だった。長身飄々、自転車で都内を駆けまわっていた木下さんも、さすがに動揺する。手術に十時間を費やすという。
彼は小型のビデオカメラで、医師との対話を録画していた。それとCT(コンピューター断層撮影)、MRI(磁気共鳴画像装置)、PET(陽電子放射断層撮影)などの検査画像を編集して映画をつくった。
転んでもただでは起きない、ドキュメンタリー精神だ。タイトルは『がんを育てた男』。セカンドオピニオンとして、『患者よ、がんと闘うな』で知られる近藤誠医師を訪ねると「育ててみてはどうか」と言われ驚く。しかし、受けいれた。
この映画の主張は「患者が選択する」だ。選択の連続が実存だ。木下さんはQOL(生活の質)を優先して、臓器を丸ごと切除する外科手術第一主義に抵抗。「放射線治療+抗がん剤」で、がんを消すことに成功した。
「死を意識すると緊張が走るね。生きる時間を意識できる」と言う。同感だ。(ルポライター)
*「東京新聞」2016年9月13日
12月9日(金)午後7時〜、東京ボランティアセンター 500円。トーク=木下昌明、松原明、佐々木有美